○武藤運十郎委員長 ほかに御意見ありませんか。それでは小澤証人を喚問します。小澤君に一言説明をしておきたいと思うのですが、御承知の通り中曽根幾太郎という男が、世耕情報に関連して軍服拂下を理由に詐欺をいたしました。約六百四十五万円の金を受取つておりまして、そのうち二百五十万円を辻嘉六に三回に亘つて渡している。辻はその受取つた二百五十万円を昨年の総選挙に際して、候補者三十九名に対して一万、二万、三万というふうに選挙費用として渡しております。当委員会は政界の淨化という建前から、この問題を取上げまして、眞実を明らかにするために、これに関係をもつておる人々を証人として喚問することになつたのです。それであなたも御出頭を願つたのですが、御承知の通り偽証の制裁がありますから、十分御注意の上で眞実を述べていただきたいと思います。
それでは法律に從つて宣誓をしてください。立つて朗読してください。
〔証人小澤佐重喜君宣誓〕
○武藤委員長 辻嘉六氏は檢事局における檢事の取調べに対してこういうふうに述べております。
「小澤は自由党結成以來の知合で現在岩手縣選出の衆議院議員で自由党所属です。去の四月上旬ごろ同人が私方に來て選挙費用をもらいたいというので、二万円渡しております。これも直接本人に私方奧十一疊間で渡してあるのです。」こういうふうに述べておるようですが、この通りでありますか。
○小澤証人 二万円をいわゆる選挙の陣中見舞としてもらつたことは間違いありません。しかしその日時並びに知合関係などということは違います。すなわち日時は三月三十一日である。それから知合なんということは、自由党結成当時は全然僕は知らない。それは一昨年の五月か六月、井上卓一という前代議士があつたのでありますが、この人が選挙法違反か何かで非常に困つておつて、僕が友人なものだから、その人にいろいろ選挙違反の問題で相談に乘つてやつた。ところが井上君は、実は自分は辻君という人に御やつかいになつているから、君の意見を述べてくれないかということで、一回会つただけであります。しかしそのときは僕が主でなく、井上君が主であつたから、よく覚えていなかつたように思う。二度目に会つたときによくわかつた。
○武藤委員長 辻という人の政界においてどういう存在であるか、また辻と自由党とはどういう関係があるか御存じですか。
○小澤証人 これは自信をもつては申し上げられませんが、とにかく自由党の先輩諸君と相当知己の間にあるということは想像できる。
○武藤委員長 こんなふうにはお考えになりませんか。辻は政界の表面には出ないけれども、政界に隠然たる勢力をもつておつて、大きな発言権をもつておる。どこからということはないけれども、相当莫大な金をつくつてきて必要に應じては政党に金を出し、また選挙に際しては相当対数の政治家候補者に選挙費用というようなものを與えておるというわけで、辻氏の恩顧に與かつた政治家に対する影響力というものは、相当大きいものだということは考えられておるのですが、あなたもそういうふうにお考えになりますか。
○小澤証人 そういううわさを聞いたこともありますし、あるいはそうではないかしらんというようなことも考えないわけではないが、今ここで宣誓をしてそうであるという確信はもちません。
○武藤委員長 辻から受取つた金は全部選挙にお使いになりましたか。
○小澤証人 実は三十一日に会つて、その金というと語弊があるけれども、自分は去年は選挙法のために三十一日までずつとこちらにおつた。從つてすでに選挙に関する金は事務長と家内を呼んで、一切準備をさせておつたから、その金は全部もつていかない。しかしどういうことで使つたかという意味はよくわからぬけれども、現実にもらつた金は使わない。差引その分から拂つたことはあるかもしれぬけれども……。
○武藤委員長 何か委員諸君においてお尋ねになることはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 それでは済みました。