【国会会議録】2 – 衆 – 本会議 – 44号【1948年04月30日】

日本政治

武藤運十郎君 不当財産取引調査特別委員会の第一回調査報告を申し上げたいと存じます。
 まず、本委員会の概況について一言申し上げておきたいと存じます。御承知の通り本委員会は、昨年十二月十一日、本院における不当財産取引調査特別委員会設置に関する決議に基き設置されたものでありますが、その調査事項は廣範かつ綿密を要しますので、本委員会に事務局を設け、現在七名の調査員と五名の事務補助者が調査事務に從事いたしております。近くさらに若干増員として、事務局の整備充実をはかりたいと存ずる次第であります。
 本委員会が設置せられましてから、去る一月二十九日第一回の委員会開会以来、四月二十七日までに十六回の委員会を開会して、調査審議を進めてまいりました。兵器処理に関する問題と復興金融公庫の融資状況小委員会は、足立梅市委員が小委員長に就任して、鋭意調査を進めておる次第であります。
 本委員会において、当面調査審議を要する案件として取上げている問題は、
一、辻嘉六氏をめぐる政治資金に関する件
二、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。
三、兵器処理に関する件
四、復興金融公庫の融資に関する件
五、群馬縣におけるコーヒー拂下げ処分に関する件
六、西村埼玉縣知事の特殊物件処理に関する件
七、昭和電工、竹中工務店、梅林組、清水組等に対する不当融資等に関する件
 目下調査審議中の右七件について、今日までの委員会の経過を中間的に御報告申し上げます。
 一、辻嘉六氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、中曽根幾太郎氏がほか数名が、いわゆる世耕情報をめぐつて、軍服拂下げに関し六百四十五万円余を詐取したとの疑により起訴せられ、目下公判中でありますが、この多くの國民に迷惑をかけた金のうち、二百五十万円が中曽根より辻嘉六氏に献金せられ、辻氏はこの金を、昨年四月選挙の際。約四十名の立候補者に対して、陣中見舞というような趣旨のもとに分與しておるのであります。本委員会は、これが眞相糺明のため、本月五日以來今日まで七回にわたり、関係者四十五名を委員会に出頭を求め、証人として喚問いたしました。なお辻嘉六、山口久吉の両氏は病氣のため出頭できないので、臨床の上尋問をいたしました。中曽根幾太郎氏も、本日証人として喚問いたした次第であります。
 今日まで出頭した証人の各証言は、大体において一致いたしておりますが、二、三の証人につきましては、重要な点において相当の食い違いがありますので、あるいは偽証の告発をしなければならないことになるかもしれません。
 なほ辻氏は、中曽根幾太郎氏以外に、吉田彦太郎氏ほか三名から、六百五十万円余の金を献金せられておりますので、これらの金もまた政治資金として撤布せられたか否かの点につきましても調査を進めてまいりたいと考えております。
 二、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、龜井貫一郎氏が軍服拂下げに関し詐欺の嫌疑により起訴せられ、目下公判中でありますが、龜井貫一郎氏と関連ある厚生同胞協力会関係の綿引喜一氏ほか二名の詐欺被告事件と一括して調査することにいたしております。問題の中心は、詐取金合計約一千三百万円のうち約四百七十万円が政治資金として撤布せられている事実の糺明にあるのであります。
 右のごとく、辻氏をめぐる政治資金問題については、いまだ必ずしもその核心をついてはおりませんが、今までの調査によつて判明した一つのことは、辻氏という政界裏面における特異な存在人物を中心として、一方からはこれに二百万、三百万というように大口の政治献金が行われ、他方数十人の政治家がここに集まつて、二万、三という政治資金の分配に興かつていたという事実であります。かくのごとき人物の存在と、これを中心とする金銭の授受が、日本の政界、官界及び財界をいかに腐敗せしめるかという事実の糺明は、しばらくこれを後日に譲るといたしましても、少なくともこの事実は、日本の政党及び政治家が選挙に際して莫大な費用を要することを証明するものでありまして、これが政界腐敗の根本原因であることを考えまするとき、委員会は國会に対して、速やかに適当な立法をなすべきことを勧告するものであります。この意味におきましてはまさに行われんとする選挙公営を中心とする選挙法の改正及び政治資金規正法の制定等は、未だ完璧とは言い得ないとしても、政治腐敗防止の一方法として、まことに時宜に適するものと考える次第であります。

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